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Columns2020/12/21Last Update: 2026/07/17

予約販売(プレオーダー)の設計方法【2026年版】― オーソリ25日ルール時代の決済・物流・法務

ECの販売スキームにおいて、予約販売(プレオーダー)は有効な売り方の一つです。未来の仕入れ予定をもとに販売するのはもちろん、生産の目処が立っていれば、受注数量を生産元に発注して「売れただけ作る」という受注生産モデルも実現できます。在庫リスクを抑えながら人気商品の機会損失を防げる ― うまく設計できれば、事業者にも顧客にもメリットのある仕組みです。

本記事は2020年12月に公開したものですが、今回、全面的に書き直しました。理由は2つあります。1つはShopifyの進化 ― 購入オプションや配送分割など、当時は自前で設計するしかなかった論点の多くが、プラットフォームの標準機能になったこと。もう1つが、2026年7月23日に施行が始まるクレジットカードの「オーソリ25日ルール」です。長期の予約販売の決済実務を根底から変えるルール変更が、まさにいま始まろうとしています。

この記事でわかること

  • → 2026年施行「オーソリ25日ルール」の内容と予約販売への影響
  • → Shopifyでの決済設計3つの選択肢と、リードタイム別の使い分け
  • → 配送分割・同梱制限という物流設計の考え方
  • →特定商取引法(最終確認画面・前払式通信販売の承諾通知)への対応

2026年の大転換:オーソリ「25日ルール」とは

クレジットカード決済では、受注時に「仮売上(オーソリ)」で与信枠を確保し、出荷時に「実売上(キャプチャ)」へ切り替える運用が広く行われてきました。日本ではこの仮売上を最長60〜90日間保持できる仕様が一般的で、「出荷までオーソリを保持し、出荷時に売上を確定する」という予約販売の決済設計は、この長い有効期間に支えられてきました。

この前提が、2026年7月以降、Visa・Mastercardのブランドルール改定によって崩れます。

2026.7.23国内発行カードのオーソリ有効期限が最長25日に従来の60〜90日から大幅短縮。仮売上日当日を0日としてカウント
2026.8海外発行カードは最大7日に決済代行会社により実質3〜7日。8月中より順次適用
2026.9.30少額オーソリによる有効性確認が禁止にいわゆる1円オーソリ。専用の確認手段(Account Verification)へ移行
2026.10.2期限超過オーソリの自動キャンセルが開始決済代行側の日次バッチで自動処理
Visa・Mastercardブランドルール変更の施行スケジュール(2026年)

ポイントは3つあります。第一に、国内発行カードのオーソリ有効期限が最長25日に短縮されること。第二に、海外発行カードは最大7日とさらに短く、越境ECでは出荷まで数週間かかる予約販売がそのままでは成立しなくなること。第三に、期限を超過した仮売上は決済代行側で自動キャンセルされるようになることです。キャンセル後に代金を回収するには顧客への再決済依頼や再オーソリが必要ですが、限度額不足や購買意欲の低下で失敗するリスクが高く、事実上の売上消失につながりかねません。

つまり、「発送時まで何日でもオーソリを保持できる」という旧来の前提は、もはや成り立ちません。注文から出荷まで25日を超える可能性がある予約販売・受注生産を行う事業者は、決済設計そのものの見直しが必要です。

決済設計:Shopifyでの3つの選択肢

前提知識として、Shopify Paymentsのオーソリ有効期間はカードブランドごとに異なります。Visa・Mastercard・American Expressは最大30日ですが、JCBとDiscoverは10日、Diners Clubと銀聯は7日です。日本のECではJCB比率が無視できないため、「全注文を一律で出荷時決済にする」という運用は、今回のルール変更を待つまでもなく事故のもとでした。この前提の上で、予約販売の決済設計は大きく3つに整理できます。

即時決済(前払い)
Pay now ― 選択肢A
注文時全額を実決済(キャプチャ)
待機期間:オーソリ期限の制約なし
出荷時会計上は出荷実績ベースで売上計上
シンプルで確実。特商法13条の承諾通知が義務に
チャージレイター(購入オプション)
Charge later ― 選択肢B
注文時頭金(デポジット)のみ決済し、カード情報を安全に保管(vault)
オーソリを保持しない
出荷時保管したカードへ残額を自動請求
25日ルールの影響を受けない設計。アプリ導入が前提
予約販売の決済設計:25日ルール時代の2つの現実解

選択肢A:即時決済(前払い)で受ける

受注時に全額を実決済してしまう方式です。オーソリ期限の制約から完全に解放され、代金回収も確実です。本記事の旧版でも「現実的な落としどころ」として紹介した方式で、会計上は決済時点で前受金として扱い、出荷実績ベースで売上計上するレポーティングを組めば成立します。ただし、発送前に代金を受け取るため特定商取引法上の「前払式通信販売」に該当し、第13条の承諾通知義務が発生します(後述)。

選択肢B:チャージレイター型(購入オプション)

Shopifyには2022年以降、購入オプション(deferred purchase options)という仕組みがあり、予約販売が標準サポートされています。受注時に頭金(デポジット。「全額の20%」のような割合設定が可能)だけを決済してカード情報を安全にトークン化・保管し、残額は指定日に、保管したカードへ自動請求できます。オーソリを長期保持しないため、25日ルールの影響を受けません。残額請求のトリガーとして「出荷時(due on fulfillment)」の正式サポートも進んでおり、実装の選択肢はさらに広がりつつあります。実務上は、購入オプション対応の予約販売アプリ(国産ではRuffRuff予約販売など)を導入して実現するのが現実的です。

選択肢C:標準オーソリ+手動確定(短期リードタイム限定)

リードタイムが7日以内に収まる短期の予約であれば、Shopify Paymentsの標準的なオーソリ+手動確定(またはフルフィルメント時の自動確定)でも運用できます。その場合も、管理画面の「設定>決済」で「承認の有効期限が切れる1日前に警告を送信する」を有効化しておくことを強く推奨します。想定外の入荷遅延が起きた際、失効前に手動での売上確定や請求書送付といったリカバリーが打てます。

リードタイム別の使い分け

  • 7日以内:選択肢C(標準オーソリ+警告メール設定)で運用可能。
  • 8〜25日:選択肢B(チャージレイター型)が本命。Cで運用する場合はJCB等の短期失効ブランドに注意。
  • 25日超(アパレル先行予約・受注生産など):選択肢AまたはB。オーソリ保持を前提とした設計は選ばない。

補足:アプリを使わない軽量実装(Liquid+Flow)

「指定日時に販売を自動開始する」だけの先行予約であれば、アプリなしでも実現できます。対象商品に管理用のタグ(例:販売日時指定)を付け、テーマのLiquidテンプレートでそのタグを持つ商品の購入ボタンを無効化して「◯月◯日より順次お届け予定」と表示しておく。そしてShopify FlowのScheduled timeトリガーで、指定日時にタグを自動削除する ― その瞬間から通常どおり購入可能になります。追加コストゼロで運用できる一方、決済の繰り延べや配送分割といった高度な管理はできないため、あくまで「販売開始アナウンスと受付開始の自動化」に限定した割り切りです。テーマ(Liquid)ストア向けの手法ですが、ヘッドレス構成でも同じ発想をフロントエンド側で実装できます。

物流設計:「分割」か「制限」か

予約品と通常品が同時に注文されたらどうするか。旧版でも扱った、予約販売の古典的な論点です。かつては「予約品が揃うまで通常品も発送しない」か、テーマを作り込んで「カゴを分ける」かの二択で、どちらも痛みを伴う設計でした。

現在のShopifyには、この問題への標準解としてチェックアウトの配送分割(split shipping)が用意されています。予約品と通常品がカートに混在すると、チェックアウト上で「荷物1(通常品):本日発送」「荷物2(予約品):◯月◯日発送予定」のように配送グループが自動で分かれ、顧客は荷物ごとに配送方法を選べます。「設定>配送と配達」から有効化でき、注文は複数のフルフィルメントオーダー(出荷指示)に分割されて処理されます。旧版で紹介した「カゴを分ける」実装は、プラットフォーム標準の機能に置き換わったわけです。

ただし、手放しでは喜べません。配送分割には送料設計との相性問題があります。例えば「合計10,000円以上で送料無料」を設定している店舗で、顧客が通常品7,500円と予約品5,000円を同時購入すると、合計12,500円で送料無料が成立します。しかし実際の出荷は2回に分かれるため、店舗が負担する実送料は2倍。低単価で送料負担の重い商材では、利益率を大きく毀損します。

この対策が同梱制限(同時購入不可)のアプローチです。カート投入の段階で予約品と通常品の同時購入をシステム的に遮断し、それぞれ個別に決済してもらう方式で、アプリでノーコード実装できます。「同じ入荷時期の予約品同士だけ同梱を許可する」「受注生産品は単品購入のみとする」といった細かなルール設計も可能で、冷蔵・冷凍・常温といった配送温度帯の混載防止にも応用できます。

「分割」と「制限」のどちらを選ぶかは、客単価・送料設計・商材特性次第です。送料無料ラインを多用する店舗ほど「制限」が効き、送料を実費に近い形で設定している店舗は「分割」の顧客体験メリットを素直に享受できます。

法務:特定商取引法への対応

予約販売は、商品の引き渡しより前に契約・決済が行われるため、特定商取引法(通信販売)の規制がフルに適用されます。設計段階で押さえるべきポイントは2つです。

最終確認画面の6要素

2022年の特商法改正により、注文を確定する「最終確認画面」(Shopifyでは「注文を完了する」ボタンのある画面)での表示義務が厳格化されました。予約販売では特に、(1)分量、(2)販売価格・支払総額、(3)支払時期・方法、(4)引渡時期(「◯月上旬〜中旬頃発送」など具体的な目安)、(5)キャンセル・返品特約、(6)申込期間(期間限定予約の場合)の明示が求められます。また、返品特約をサイト上に明記していない場合、商品到着から8日以内は消費者が送料自己負担で返品できる法定ルールが適用されます。「予約注文確定後のキャンセル不可」としたい場合は、特約の明文化が必須です。

前払式通信販売の「承諾通知」(第13条)

選択肢Aのように発送前に代金(の全部または一部)を受領する場合、特商法第13条の「前払式通信販売」に該当し、受領後遅滞なく、承諾の旨・受領金額・引渡時期などを記載した通知(電子メール可)を送る義務があります。Shopifyの標準注文確認メールだけでは要件を満たしきれない場合があるため、Shopify Flowで「Order paid × 注文タグPreOrder」をトリガーに、法定項目を織り込んだ承諾通知メールを自動送信するワークフローを組んでおくと、受注量が増えても通知漏れを防げます。

運用・CX:「待たせる期間」を設計する

予約販売は、購入から手元に届くまでの期間が長いぶん、通常販売以上にコミュニケーション設計が重要です。リードタイムが数ヶ月に及ぶと、顧客が注文自体を忘れてしまうことは珍しくありません。

筆者は以前、物流倉庫を見学させていただいた際、返品棚が膨らんでいく光景を目にしたことがあります。引越しで届け先が変わっているのに注文したことを忘れていて、受け取れない ― そんな理由で戻ってきた予約商品たちです。楽しみに予約されたはずの商品が、誰にも受け取られないまま倉庫の棚を占有している。あの光景には、正直、胸が痛みました。予約販売における「待たせる期間」の設計は、売上のためだけでなく、こうした無駄な物流・返品コストと、残念な顧客体験を防ぐためのものでもあります。

具体的な打ち手は次の通りです。

  • 発送リマインド:発送時期が近づいたら、メールより開封率の高いLINEやSMSで通知する。Shopify FlowとLINE連携アプリを組み合わせれば「フルフィルメント作成 × PreOrderタグ」をトリガーに自動配信でき、配送先の変更確認を兼ねるのが理想です。
  • 在庫切れ→予約受付への自動切り替え:Flowで実在庫ゼロを検知し、「在庫切れでも販売を続ける」への変更と予約販売ルールの適用を自動実行する。オーバーセリングを防ぎながらバックオーダーへ移行できます。
  • フロントでの明示:商品カードへの予約バッジ、発送予定時期の明記、カートに予約品がある場合の配送日時指定モジュールの自動非表示など、「即納品と予約品の区別」を徹底する。誤購入によるクレームの予防にもなります。

まとめ

予約販売の導入は「購入ボタンの文言を変える」ことではなく、決済・物流・法務・顧客コミュニケーションにまたがる統合設計です。

  • 2026年7月施行の25日ルールにより、「オーソリ保持で出荷時決済」という旧来型の設計は成立しなくなる。リードタイムに応じて、即時決済(前払い)かチャージレイター型(購入オプション)へ移行する。
  • 物流は「配送分割」が標準機能になった一方、送料無料設計との相性問題がある。「同梱制限」との使い分けが鍵。
  • 前払いで受けるなら、特商法13条の承諾通知をFlowで自動化し、確実に履行する。
  • 「待たせる期間」のコミュニケーション設計が、キャンセル・受取拒否・返品の山を防ぐ。

法令遵守・物流コストのコントロール・確実な代金回収。この3つのバランスを商材とリードタイムに合わせて最適化することが、予約販売を持続可能な販売スキームにする道です。25日ルールの施行を機に、自社の予約販売の設計を一度点検してみてください。

参考・出典
  • 購入オプション(Shopify ヘルプセンター)
  • 予約注文(Shopify ヘルプセンター)
  • 支払い承認と支払いの確定(Shopify ヘルプセンター)
  • Shopify Checkoutでの分割発送(Shopify ヘルプセンター)
  • About pre-order and Try Before You Buy(shopify.dev)
  • VISA・Mastercardのルール変更に伴うクレジットカード決済の仕様変更について(カラーミーショップ)
  • クレジットカード/ブランドルール変更に伴う取引仕様変更(GMOペイメントゲートウェイ)
  • オーソリ25日ルールとは(Recustomer)
  • 特定商取引法ガイド(消費者庁)

本記事は2026年7月時点の公開情報をもとにしています。ブランドルール変更の適用時期・仕様は決済代行会社により異なる場合があるため、必ずご利用中の決済サービスの告知をご確認ください。また、特定商取引法に関する記述は一般的な解説であり、個別の法的判断については専門家にご相談ください。

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